Heart その心

いちいち 1|小さいカップ

日本酒のお猪口、トルコのチャイのカップ、中国茶のカップ、エスプレッソ・カップ…

ほかにもまだあると思います、小さいカップ。日本の湯のみ茶碗もどちらかと言えば小さいカップに入るでしょう。

どのカップも飲み物が入る分量は少ないので、エスプレッソを除けば、ちびちび継ぎ足し継ぎ足し飲みます。

エスプレッソは濃度が高いのでカップはあの小ささで充分、クィッとやる姿が何とも粋なものです。誰かの家に招かれてエスプレッソを出されると、決まって「冷めないうちに。」と促されます。ホスト側は熱いうちにクィッとやることを見張って、おいしさを味わわせる責任にかられているかのようです。町のバールやカフェでは立ち飲みでクイッ。なじみ客同士、あるいは店主やウェイターと親しげに、でもサラッと言葉を交わして、また次のカフェの一こままで一仕事。この小ささが暮らしのリズムを作っているかのようです。

さて、お猪口も含めて、濃度の低い方の小さいカップはと言えば、終わりを訪れさせないかのように、継ぎ足し継ぎ足し、差しつ差されつ、ちびりちびり。おしゃべりの間中、ずっとそのお供をします。大きいコーヒーカップやティーカップでのおしゃべりとは相手との距離が違うように感じます。
小さいカップでは、ちょこちょこ継ぎ足すから、継ぎ足す方も足される方も落ち着かない、なんて、マイナスの印象を持つ人もいるかもしれません。そういえば、イタリアからフィンランドへ留学した学生が「フィンランドでは、合った時と別れ際にいちいちほっぺにチュウしなくていいから、ラク!」と言っていました。

さて、小さいカップに戻ります。小さいカップで「いちいち」やりたいのです。「いちいち」表現したいのです。
「おやっ、減ってる。」
「まぁ、飲めよ。」
「まぁ、もう一杯分、ゆっくりして行きなさいよ。」
小さいカップの一杯分だから、気兼ねも多くありません。ただ、それが長々続くわけではありますが…

小さいカップを使って、もてなしの気持ちを小分けにしていちいち届けます。